不動産の売却時における契約不適合責任は、売主にとって見過ごせない大きなリスクです。しかし、事前に適切な準備を行うことで、そのリスクは大幅に軽減することが可能です。ここでは、具体的な準備方法と、実際にトラブルとなった事例を交えて、売却時に注意すべきポイントを徹底的に解説します。
まず最初に取り組むべきは、「事前インスペクション」の実施です。インスペクションとは、専門業者が物件の状態を第三者目線で調査・評価するもので、主に雨漏り、シロアリ被害、配管の老朽化などの建物内部の不具合を確認します。費用は5万円~10万円程度が相場ですが、後の補修費や損害賠償の可能性を考えれば、十分に元が取れる投資です。
次に、「重要事項説明書と契約書の記載の精度向上」が挙げられます。不動産会社や司法書士と連携し、設備や建物の状態、土地の法的制限、境界問題、過去の修繕歴などを明確に記載することで、後々の「言った・言わない」問題を回避できます。記載が曖昧だと、買主が誤解しやすく、契約不適合責任を問われる可能性が高くなります。
さらに、実際に起きたトラブルとして、大阪市内のある物件では、売却後にシロアリ被害が見つかり、買主が損害賠償を請求した事例があります。売主は「知らなかった」と主張しましたが、購入時にインスペクションをしていなかったことから「重過失あり」と判断され、裁判で賠償命令が下りました。このように、知らなかったでは通用しないのが契約不適合責任の厳しさです。
また、「売却前の簡易リフォームによる問題隠し」もリスク要因です。一見綺麗に見えても、根本的な不具合が放置されたままでは、売主の責任が問われることになります。建物状況調査の報告書を添付して買主に渡すことで、誠実な対応を示すことができ、結果的にトラブル回避にもつながります。
加えて、契約書には「契約不適合責任の免責条項」を設けることが可能ですが、これは万能ではありません。特に、故意または重大な過失による情報の隠蔽があった場合、免責は無効とされるため、むしろリスク管理の甘さを突かれる原因にもなり得ます。
最後に、信頼できる不動産会社の選定も重要な準備の一つです。売却実績、口コミ、対応の丁寧さなどを基準に複数社を比較し、安心して任せられるパートナーを選ぶことが、トラブルのない取引への近道です。