原価法の仕組みと計算の流れ
原価法は、建物の再調達原価から経年による価値の目減り分を差し引いて評価額を出す方法です。再調達原価とは「同程度の建物を新築した場合に必要な費用」のこと。減価償却による価値の低下分は計算式で調整します。計算式は、再調達単価 × 延床面積 × 現価率(残存年数/耐用年数)です。たとえば、鉄筋コンクリート造なら耐用年数47年、木造なら22年が目安です。原価法は主に中古住宅や戸建ての評価で使用され、リフォームや修繕履歴も評価に反映されます。建物の実態に即した評価ができるのが大きな特徴です。
原価法の計算例
木造戸建ての場合、築年数ごとに減価率が定められています。以下は年数別減価率の一例です。
| 築年数 |
減価率 |
| 5年 |
0.77 |
| 10年 |
0.54 |
| 15年 |
0.36 |
| 20年 |
0.22 |
| 22年以上 |
0.00 |
例えば、再調達単価70万円/㎡、延床面積100㎡、築15年の場合は70万円×100㎡×0.36=2520万円となります。リフォーム歴や設備の状態により、さらに評価額が調整されることもあります。
取引事例比較法による査定と補正方法
取引事例比較法は、近隣の成約事例を集めて、査定対象と条件を比較・補正し、相場価格を算出する方法です。補正項目には立地、面積、築年数、方位、階数などがあり、特徴ごとに補正率を設定します。複数の売買事例を集めて単価を算出し、各補正率を掛け合わせて標準化。平均単価を対象物件に乗じて査定額を算出します。この方法は土地やマンションの査定で多く使われ、市場の動向を反映しやすい点が大きな強みです。
取引事例比較法の具体例
例えば近隣5件の売買事例を比較し、各物件の単価を割り出します。その後、対象物件との違いを補正し、最終的な査定価格を導きます。
| 事例 |
価格(万円) |
面積(㎡) |
単価(万円/㎡) |
補正後単価 |
| A |
4000 |
85 |
47.1 |
45.0 |
| B |
3700 |
80 |
46.3 |
44.2 |
| C |
4200 |
90 |
46.7 |
45.5 |
| D |
3950 |
83 |
47.6 |
45.3 |
| E |
3800 |
82 |
46.3 |
44.5 |
補正後平均単価45.0万円/㎡に対象面積を掛けて査定額を算出します。
収益還元法の概要と利回りの考え方
収益還元法は、投資用物件や賃貸マンションなどで利用される手法です。対象物件が生み出す純収益を、適切な還元利回りで割り戻して評価額を算出します。計算式は年間純収益÷還元利回りです。純収益は家賃収入から運営経費や空室損失を差し引いて求めます。還元利回りの設定は、相場や築年数、管理状況などから判断します。将来的な価値や収益性も反映できるため、収益物件の価値判断に欠かせない手法です。
収益還元法の査定例
アパートの査定例では、年間家賃収入600万円、運営経費100万円、還元利回り5%の場合、(600万円-100万円)÷0.05=1億円となります。還元利回りは周辺の取引事例や金融環境を参考にして設定し、将来の収益見通しも考慮して調整します。
3つの査定手法の比較と複合利用
物件ごとに適した査定方法は異なります。土地やマンションは取引事例比較法、戸建ては原価法、収益物件は収益還元法を基本とします。実際の査定ではこれら複数の手法を組み合わせ、査定の精度向上を図るケースが多く見受けられます。たとえば戸建ての場合、原価法と取引事例比較法の双方で評価を行い、各算出結果の差を調整します。物件の特性やエリアごとの特徴、最新の相場情報も加味しながら、多角的な視点で総合判断することが重要です。適切な手法選択によって物件の価値を最大限に引き出すことができます。